題名がいい話っぽく聞こえますが、全くいい話ではない。ただの夢と記憶。
実家は二世帯住宅だった。
二階に父方の祖父母が住んでいた。
じいちゃんは早くに亡くなったので、あまり思い出はない。
二階にはばあちゃんと猫が住んでいた。
共働きだったのでうちに帰ったらばあちゃんの部屋で弟と猫と遊んでいた。
ばあちゃん一人で飯を食っているのは寂しいからと、たまの土日はばあちゃんを下に連れてきて一緒にご飯を食べていた。
そこでばあちゃんはよく町内会のジジイババアの諍いごとを話していた。
別にボケているわけではないのだが何回も何回も同じ話をしてくるばあちゃん。
子供たちは飽き飽き、早く二階に戻れよと思っていた。
こっちは「ばあちゃんその話2回目だよ3回目だよ」って言ってやるんだが気にしないで話し続ける、本当にイラッとした。
でも母は何回もうんうんと話を聞いていた。
母がかわいそうに感じた、母は本当に偉いと思う。
父も亡くなり、兄弟も家を離れ、母が母方の祖父母の家に介護のために行くようになると、うちにはばあちゃんと猫しかいなくなった。
近くに住んでいるのは自分だけだったから、様子を見によくばあちゃんと猫に会いに行っていた。
そこでもまたばあちゃんは何回も同じ話をしてくる。
別にボケているわけではないのだ。死ぬまで矍鑠としていたから。
その時は自分もうんうんと聞いていたように思うが、いい加減にして欲しい時は猛烈に怒ってやった。
それまでの母の鬱憤を晴らすかのように。
それでもばあちゃんはめげなかった。
傷んでるから食べられないからあげる、と野菜とか魚とかくれるのだ。傷んでるんだからゴミのような要らんもんばかり。
もうその時はばあちゃんの存在もゴミのようにしか考えていなかった。
それでもありがとうと言ってもらっては、自分の家に持って帰って捨てていた。
猫が亡くなるのとほぼ同じくしてばあちゃんも死んだ。
死んだあと、遺品を片付けていると日記のようなものがあった。
字もうまく書けないような婆さんだったから、猫がかわいいとか、あそこのうちの婆さんがうるさいとかしか書いてなかった。
ばあちゃんが出てきた夢を見た。ばあちゃんがいつも作ってた甘いカレーライスを食べてあげる夢。
やっぱり、いつものように残ったら食べてくれって言われて差し出される食べかけのカレーライス。
安い米と安い炊飯器で炊いたパサパサのご飯に粉のルーを使ったバシャバシャの黄色いカレーライス。
そんなカレーライスでも夢の中の自分は仕方なく食べてやったさ。